Dentalism No.21
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地域の平均所得が100万円増えると無歯顎になるリスクが約6割も減少。 高齢者の無歯顎は、個人所得だけでなく、地域の平均所得とも関連することが日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトの調査で判明した。埼玉県立大学などとの共同研究によるもので、65歳以上の高齢者を対象に郵送調査を実施。歯の本数や所得の情報が得られた79563人のデータを使用し、無歯顎の有無と個人及び地域所得との関連を同時に検証した。 その結果、性別、年齢、婚姻状態、教育歴、及び歯科医院密度を考慮した上で、個人所得と地域所得がどちらも高くなるほど、無歯顎になるリスクが減少する傾向が見られたという。具体的には、個人所得および地域平均所得が100万円高くなると、無歯顎になるリスクが個人所得では1割、地域所得では約6割減少した。 また、所得と無歯顎との関連についての男女差は、女性が男性に比べて、より地域所得が高い地域に住むほど、無歯顎になるリスクが統計学的有意に小さくなることが示された。 このことから、個人の所得が同じレベルでも、地域所得が高い地域に暮らす人は低い地域に比べ無歯顎のリスクが低くなることが判明。特に女性では、地域所得の影響をより強く受けていることが分かった。研究グループは、「無歯顎を防ぐためには個人へのアプローチだけでなく、地域経済水準の向上や地域に暮らすすべての人に対する公衆衛生的なアプローチによって、社会環境的な要因を改善し健康な地域づくりを進める必要性が示唆された」としている。埼玉県立大学保健医療福祉学部 健康開発学科伊藤 奏 助教個人所得が増えることで無歯顎が減る程度には男女差は見られないが、地域所得では、女性のほうが地域所得が高くなるほど無歯顎のリスクが減少する傾向がより強く見られた。 7891011121314低位男性女性中位高位■無歯顎の割合と所得との関連についての男女差無歯顎の割合(%)個人所得(3分位)地域所得(3分位)歯周病を持つ人は持たない人に比べ関節リウマチの発症リスクが2.7倍に。 近年、歯周病と関節リウマチとの関係が注目されている。関節リウマチ患者の約8割の血液中には、抗シトルリン化蛋白抗体(抗CCP抗体)という、シトルリン化反応を経たタンパクを認識する抗体が検出されるが、この抗体はしばしば関節リウマチの発症に先立って検出される。また、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス菌がシトルリン化を起こす酵素を産生する細菌であることも報告されている。そのため歯周病の罹患が、この歯周病菌の持つシトルリン化酵素による過剰なシトルリン化を介して抗CCP抗体の産生を引き起こし、関節リウマチの発症につながっているのではないかと考えられるようになったのだ。 そこで、京都大学医学部附属病院歯科口腔外科の別所和久教授と同院リウマチセンターの橋本求特定助教らの研究グループは、この相関関係を証明するために研究を開始。約1万人の健常人を対象とした疫学調査「ながはまコホート」のデータを用いて解析を実施。その結果、健常人の約1.7%に、関節リウマチを発症していないにもかかわらず抗CCP抗体の産生が確認され、この抗体の有無や力価と歯周病の臨床評価の指数とが有意に相関することを見出した。 さらに、京大病院リウマチセンターを未治療、未診断で受診した72名の関節痛患者の歯周病状態を評価。それらの患者がその後関節リウマチを発症するか、2年間の追跡調査を行った。その結果、初診時に歯周病を持つ関節痛患者は、歯周病を持たない患者と比較して、関節リウマチと診断されるリスクが約2.7倍高くなることが判明。研究グループは今後、歯周病が関節リウマチの発症に影響を及ぼすメカニズムが抗CCP抗体の誘導だけなのか、あるいはポルフィロモナス菌が特に関係しているのかなどについては、さらなる研究が必要としている。京都大学医学部附属病院リウマチセンター橋本 求 特定助教京都大学医学部附属病院歯科口腔外科別所和久 教授

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