Dentalism No.21
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口腔内の傷はなぜ治癒が早いのか。その生体メカニズムを解明。 口腔に生じた傷は皮膚よりも治癒が早く、傷痕が残りにくいと言われている。これまでそのメカニズムは解明されていなかったが、九州大学大学院歯学研究院の城戸瑞穂准教授、自然科学研究機構生理学研究所の富永真琴らの研究グループの発表によってその一端が明らかとなった。 研究グループは、カルシウム透過性の高い温度感受性イオンチャネルであるTRPV3に着目。口腔粘膜の表面には上皮細胞が層をなしている。その上皮細胞は体温の36度前後の温かさに反応するが、その温度の受容をTRPV3が担っていることを確認。さらに、皮膚の培養角化細胞よりも口腔の上皮細胞の方がTRPV3の発現が強いことから、TRPV3が口腔の傷の治癒に関わっているのではないかと考えた。 マウスの歯を抜いて傷の治り具合を調べたところ、TRPV3遺伝子欠損は野生型マウスに比べ、治癒が遅れるという結果に。また、TRPV3の欠損により上皮細胞の増殖が野生型に比べて劣っていることが、創傷治癒の遅延に関与していることがわかった。さらに、上皮細胞の成長と増殖には上皮成長因子受容体(EGFR)が必要だが、TRPV3の欠損により活性化が抑えられていた。 研究グループは、「この結果により、温度感受性チャネルが口腔内の創傷治癒の仕組みに関係していることがわかりました。TRPV3は口腔だけでなく、消化管粘膜や皮膚にも発現しており、火傷や手術創、口内炎などの治療に、このTRPV3チャネルを標的とした温熱療法や薬剤の開発が期待されます」としいている。九州大学大学院歯学研究院城戸瑞穂 准教授マウスの口腔内の写真。TRPV3欠損マウスでは、青い線で囲まれた抜歯後の傷の面積が野生型マウスより広くなっている。矯正、インプラント、審美の自由診療が特定商取引法の対象となる可能性あり。 ここ数年、長期にわたる高額な自由診療をめぐり、歯科医院と患者との間でトラブルが増えている。そんな中、消費者庁が開いた「消費者委員会第1回特定商取引法専門調査会」で、これらの自由診療を特定商取引法の対象とする要望が提出された。 特定商取引法とは、訪問販売や通信販売など消費者とトラブルを生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールを定め、不公正な勧誘を取り締まることにより、消費者の利益を守る法律だ。近年では、エステや語学教室などの高額の契約に対し、事情が変わったことによる中途解約で消費者が不利にならないように定めたり、クレジットによる悪質な契約を無効にしたりといった改正がなされている。 今回、特定商取引法の対象になる可能性があるのは、矯正治療やインプラント、審美歯科。この背景には、それぞれ、説明不足や術後経過などによるトラブルが多数報告されていることがある。特定商取引法の対象となれば、契約時に重要項目を記した書面の交付の義務付けや中途解約が認められるようだ。 特定商取引法はもともと悪質な商売を取り締まるための法律。今回、その対象候補として歯科医院での治療が上がっていること自体が由々しき問題ではないだろうか。歯科治療は商売ではなく医療行為である。一部の歯科医院による金儲けのための悪質な勧誘や未熟な施術により、それほどまでに業界全体のイメージが損なわれていることは事実であろう。そのことをよく考えなければならない。

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