Dentalism No.21
13/36

――患者さんに対する責任感、医療人としての倫理観のなさに閉口します。売上重視の商売のようですね。小宮山 歯科医がそうなら、メーカーや業者がそうなってしまっても不思議ではありません。メーカーというのは売ることが仕事ですからね。でも、メーカーサイドに気を付けていただきたいのは、インプラントは身体の中においてきて長持ちさせなければならない生体材料です。1年ぐらい成績が良いからといって市場に出てくるものもありますが、煮詰めが足りないものもあります。 ブローネマルクのインプラントが問題を起こしていないのは、臨床応用を開始してから15年間データを集め続け、膿を出し切ってから初めて外に発表したからです。だてに何年も時間をかけてきていない。今はそういうことがないですよね。「新しいものは、いいもの」と勘違いして、それに乗っかってしまう歯科医もいます。 でも、歯科医師の先生方も、よく考えてみて欲しいのです。歯科医はお金を出して製品を買いますが、メーカーは収益を上げながらデータを吸い集め、問題が起きれば、そういった製品は市場から消えていくことになります。誰が被害を受けるかといえば、一番は患者さんですが、と同時に歯科医師も被害者となるのです。歯科医師にも、患者さんにも、いい意味でもっと賢くなっていただきたいと思います。――メーカー側も、生体材料を扱っているという緊張感を持ち、販売先のモラルにも注意を払う必要がありそうですね。小宮山 昔は衛生環境が整っていない歯科医院には、インプラント材を販売しないところもあったようですが、今は面倒くさいことをいうと商売にならないので言いなりなのかも知れません。あるメーカーの講習会では、滅菌に対する意識や概念が欠落しているというレポートも届いています。 歯科医療は長い間、悪いものは除去して、あとは身体の治る能力に依存するという治療を続けてきました。しかし、インプラントはまったく別物です。いつ異物と認識されてもおかしくないものを生体内に残してくるわけで、滅菌や衛生管理については細心の注意を払わなければいけないのですが、今までの歯科医療で問題なかったのだから、この程度でいいだろうと考えている人がまだまだ存在しているということなのです。 私は趣味でカメラやバイクを扱いますが部品のサイズや強度には、それなりの理由があります。インプラントについてもブローネマルクはそこまで考えていたのです。インプラント治療で一番大切なのは骨とがっちり結合しているチタン製のインプラント本体です。何かが起こった時、それを守るために別のどこかが壊れるようになっており、交換しやすい部品が折れるようになっているのです。それが人間の知恵というものです。 でも、緩んだり折れたりするのは製品が悪いからと歯科医に言われると、メーカーは材質を強いものに変えてしまう。そうすると周りに歪みが出たり、炎症が起きたりする。折れるのは自分にミスがある証。自分の施術・設計のどこかが間違っているのです。そういうことを知らない歯科医が製品にクレームをつけると、本来のコンセプトを知らない人が増えてきているメーカー側の人間をも、間違った方に向かわせてしまうのです。――インプラント治療を受ける方や、歯科医師に今一度認識しておいていただきたいことは?小宮山 一般市民向けの講演会などでよく口にしていることですが、生体はひとり一人違います。広告などでインプラントの埋入本数を売り物にしているような歯科医院は信用できませんし、じっくり話を聞かずに自分を売り込もうとする人、インプラント治療を急がせる歯科医師にも注意するよう促しています。インプラントは一刻を争うような治療ではありませんし、あくまでも歯科治療の選択肢の一つです。患者さんのために正しい判断をしていただきたいと思います。 モラルなき歯科医療を憂う一方で、歯科界が高く評価される時代が間違いなく来ると信じ、また、そうしなければならないと語る小宮山先生の声は、とても穏やかで、優しさに満ち溢れていました。Prole 小宮山彌太郎(こみやま・やたろう)1945年茨城県出身。1971年東京歯科大学卒業。1976年東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科補綴学専攻)修了。1980~1983年イェーテボリ大学歯学部、医学部客員研究員。1990年ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター開設。2011年(社)日本補綴歯科学会副理事長。■ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター東京都千代田区一番町27 開新堂ビル4階☎03-5275-5766http://branemark.jp/昨年10月に上梓された『埋み火』(シエン社)では、「真の歯科医療従事者を志す若人への一老歯科医師からの提言」として、目標には直線距離では辿り着けないこと、回り道がやがて生きる糧となることを説いている。5年ほど前、既に臨床は行っていなかったブローネマルク教授のオフィスで見つけ、譲り受けたという白衣。注目の歯科医師インタビュー

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です