Dentalism No.21
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れました。 APのライフメンバー50名は、歯科の教科書に載っているような世界的にも超有名な人ばかりで、アクティブメンバーは78名。97年前に発足したアメリカの歯科で最も古く保守的な学会です。セラミッククラウンを普及させた歯科技工士の桑田正博先生が、8年前に日本人として初めて名誉会員に選ばれています。第1号の名誉会員はブローネマルク教授でした。いずれにしても名誉なことです。――残念なことにブローネマルク教授は昨年85歳で他界されましたが、世界に9つある「ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター」のうち、最初に教授の名を冠したセンターを立ち上げることを許された一番弟子として、今思うことは?小宮山 ブローネマルクは医師であり解剖学の教授でした。私がスウェーデンのイェーテボリ大学に留学した頃の彼は、インプラント治療については、外科処置は外科医に、補綴処置は補綴の専門医に分け、それをもの凄く頑固に守っていました。 ところが、何を間違ったのか、もしくは意図的だったのか、私が補綴科医だということをわかっていながら、私に徹底的に外科処置を叩き込んだのです。トータルにすべてを教えていただきました。 1983年、私がスウェーデンから日本に戻るときに「今、世界中で全てを一人で施術できるのは君だけなのだから、インプラントを日本で正しく教え、伝えていきなさい」と言われました。私は19年間大学にお世話になりましたが、インプラントについて学びたいという先生方に、より自由に見学いただける環境が欲しいと思うようになり、90年に開業しました。――日本でオッセオインテグレイション(チタンと骨を結合させる)インプラントを紹介されてから30年余りが経ちますが、広く技術指導・啓発活動を行う一方で、著書や講演会など、機会がある毎にインプラント治療にまつわる諸問題に触れ、警鐘を鳴らしておられる姿が印象的です。小宮山 インプラントは良い治療だと紹介しておきながら、インプラントは第一選択肢ではない、向いていない人、必要ない人もいる、ということを力説しているので、自分でもマッチポンプ男だと思います。本来、インプラントは長い間安心して使えるような治療だったはずだし、実際、正しく適用すればとても良い治療です。私も歯を失うことがあればインプラント治療を選択するでしょう。でも今は一部であまりにも目先のことしか考えていないような治療が行われているのも事実です。――過去にはインプラントの使いまわし問題や、手術で血管を傷つけ患者さんが死亡した事故などもありましたが、最近寄せられた事例ではどういうものがありますか。小宮山 つい先日、よく存じ上げている歯科医師から相談を受けたのですが、ある歯科医院でインプラント治療を受けた患者さんが再治療にいらっしゃったというので、治療にあたった歯科医院に、どんなインプラントを使ったのか、骨補填材は何だったのかなどを確かめるため、問合せをしたところ「その患者さんは、3カ月受診していないので、もう責任はありません」と、カルテの開示もなければ、情報も教えてもらえなかったというのです。あんまりな話です。 ほかでも、歯が痛いと治療に来られた患者さんの歯を、悪いから抜いたほうがいいと言って抜歯し、その後、麻酔がかかっているからといってインプラントを埋入し、患者が拒否すれば撤去し、患者が納得すればそのままインプラント患者にしてしまうという、信じられないほど程度の低いことが起きているのです。もはや医療ではありません。受付脇の壁一面に据えられた、ブローネマルク教授の写真。3年前に内装が一新されたという診療室はとても明るく開放的でリラックスできる雰囲気。窓からはイギリス大使館の庭園と、その向こうに広がる皇居の緑、さらにその奥に大手町のタワー群が見渡せる。午後からの手術に備えて、清掃と準備が行われたオペ室。

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